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卓上の時計に自分の子ども時代を見る

 

独創的な時計には、「遊び心」がデザインされていることが多い。おそらく、子どものような純粋な気持ちがデザインとして表現されているからだろう。2005年に創業したMB&Fの歴代の作品を見ていると、そんなおもいが伝わってくる。新作の「メルヒオール」もそんな作品のひとつだ。

なにしろ、SF映画から抜け出てきたような、ロボットそのものの卓上時計なのである。

MB&Fの正式名称は“マキシミリアン・ブッサー&フレンズ”。時計ファンにはお馴染みのハリー・ウィンスントンの限定コンプリケーションシリーズ「オーパス」で時計界に絶大な名声を築き上げたプロデューサー、マキシミリアン・ブッサーが、友人である時計師や工房と協力し、独創的な時計を作ってきた。

「メルヒオール オンリーウォッチ2015」も、そんな独創的な1台であり、「クリエーティブな大人は、長生きした子どもである」と銘打って、創業10周年を祝うMB&Fに相応しい“時計”なのだ。

形状は、2足歩行のロボット。映画『スターウォーズ』のファンとして、マクシミリアン・ブッサーはC-3POやR2D2に胸を踊らせ、少年期をすごしてきた。そんな彼が手がけた「メルヒオール」は、そのインスピレーションにあふれている。きっと1970〜1980年代のロボットアニメや特撮に親しんできた世代のハートに突き刺さること請け合いである。

ロボットの手足の関節は自由に動かすことができ、さまざまなポーズをとらせることができる。ボディは、パラジウムメッキをほどこした真鍮製のプレートで、やはりパラジウムメッキの真鍮製ムーブメントを固定し、そのメカニカルな動きが、ロボットの機械のようで、リアリティがある。表面の仕上げも丁寧で、さまざまな仕上げによって美しさだけでなく、立体感を強調する。

時刻は胸の部分のふたつのディスクで示し、時刻表示は、55分からゆっくりと時刻を送りはじめる特殊なジャンピングアワーとなっている。目に当たる部分は、レッドの波打つラインが20秒周期で左右に往復運度をおこなうことで、秒の経過を教える。そして、時計の規則正しい運動を律するエスケープメントは、頭頂部のガラスのドームにセットされ、精緻な動作をいつでも鑑賞できる。

時計を製作したレペ1839は、高級クロックの専門工房として定評が高く、MB&Fとのコラボレーションでは、巨大宇宙船を模した「スターフリートマシーン」や、蜘蛛をかたどった「アラクノフォビア」によって、大きな脚光をあびている。

ショルダーにレッドのプレートをもちいた「メルヒオール オンリーウォッチ2015」は、ユニークピースであり、世界にひとつの貴重品であるとともに、「メルヒオール」シリーズの最終作となる。「長生きした子ども」を童心に帰す、そんな貴重な一作を卓上に飾ってみたいものだ。